真因と根本原因の違い〜原因分析と打ち手の考察
会計士の仕事の一つに、企業の内部統制をチェックすることがあります。
今日は、内部統制のチェックに関連して、真因と根本原因の違い、原因分析と打ち手の考察について書きたいと思います。
ちょっと堅苦しい話になってしまいますが、
企業の内部統制をチェックしていると、エラーを発見することがあります。
例えば、ある会社のルールでは、
「取引先からモノを買うために購買申請をする際は、事前に発注の決裁をマネジャーから得ならなければならない」
というルールがあるとします。
ルールが守られているかチェックするために発注決裁書からサンプルをピックアップすると、マネージャーの決裁が漏れている書類を見つけることがあります。
もちろんルール違反でNGですね。ですので改善しなければならない。
そこで、その発注決裁書を申請した担当者へ事情を伺うと、
「すみません。うっかり忘れていました」
よくある理由ですよね。
なので、考えられる対策としては、
「忘れないように周知徹底を行う」
これもよくある改善策です。
でも、結局また同じようなことが起こってしまう。
それはなぜでしょうか?
これはモグラたたきになっているからだと思うのです。
だって人は忘れる生き物ですから。
では、どのような打ち手を打てばよいか。
そのためには、因果関係の、真因と根本原因を探っていけばよいと思います。
ロジカルシンキングの勉強をしたくて読んだ本に参考事例があります。
思考・論理・分析―「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践(波頭 亮)
そこでは因果関係、原因と結果に対する考察がとてもわかり易い。
Page.66「日常生活において、「スピードの出し過ぎが事故の原因である。」ということを耳にする。
何を言っているかというと、要はスピードの出し過ぎが事故の直接的原因ではない。
つまり、
スピードの出しすぎ(根本原因)
↓
飛び出しに気づくのが遅れた(遠因)
↓
ブレーキを踏むのが遅れた(真因・直接的原因)
↓
事故(結果)
この構造をしっかり見定めないと、対策である打ち手が意味のないものになってしまうからです。
書籍では、直接的原因を見定められれば、対する打ち手として、
「飛び出してくるものに対してセンサーで感知して自動でブレーキがかかるシステムを搭載する」
「ぶつかる瞬間にバンパーから強力なエアバックが外に飛び出す装置をつける」
ことが有効としています。確かに有効ですね。
その一方で、スピードという原因を解消することを問題解決の方針とすると、これは書籍には書いていなかったことですが、違反者には講習を受講させて、スピードを出し過ぎないように安全運転の意識付けを行うことも有効な打ち手だと思います。
さて、企業の発注決裁について話を戻しましょう。
「すみません。うっかり忘れていました」
この場合はどうでしょうか?
これは直接的原因ですね。
ですので、
「周知徹底」
も有効です。でもそれだけでは足りない。
では、根本原因は何が考えられるでしょうか?
必ずしも正解はないですが、
例えば、
そもそもマネージャー少ないことが根本原因ということがわかれば、
マネージャーを増やすことが打ち手になりますし、
このIT時代にいまだに発注決裁書にハンコをもらうことを要求していれば、
IT投資をしてシステム決裁に変更することが打ち手になります。
このように、真因と根本原因の違いをしっかりと見定め、それに応じて対策である打ち手を変えていかなければ、問題解決が上手くいかなくなってしまう。
この記事を読んでくれた方に、少しでもお役に立てれば嬉しく思います。