週末主夫 会計士Ranapapaの雑記ブログ

事業会社勤務のサラリーマン会計士Ranapapaです。週末は主夫をしています。子育て(娘2歳)、犬育て(ミニチュアダックス16歳)、読書、自己啓発、トレーニング、会計、税務について、日々感じたことを書いていきます。セミリタイアを目指して奮闘中です。

【読書感想】ビジネスに美意識なんて必要ない、むしろ邪魔だと思っていたけど間違いだった

 

エリートとはまるで程遠い自分には関係ないと思って敬遠していた本書ですが、気になって読んでみました。

 

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)

https://amzn.to/2NNpVrG

 

結論、読んでよかったと思っています。

エリートではない人(自分のこと)でも、美意識を鍛えると知的パフォーマンスが向上する、という研究成果も報告されているそうです。

著者の山口さんによる深い考察にも感銘を受けたので感想をシェアしたいと思います。

 

こちらの記事でも本書について触れてますので、ご参考まで。

人生を変えるビジョン

https://ranapapa.hatenablog.com/entry/vision

 

日頃仕事では、ファクトとロジックでコミュニケーションをすることが多く求められます。

というか、ファクトとロジックがないと、課題や問題解決、関係者間での合意形成もできない。

専門家として、決して熱くなってはいけないというか、氷のような冷たい世界です。

 

本書では、論理・ロジックや分析といったものを重視してビジネスの意思決定をしていくことを「サイエンス重視の意思決定」とし、今日のように複雑で環境も不安定な世界では「サイエンス重視の意思決定」の限界について説明した上で、アート、美意識、つまり美しいものを美しいと感じる心、感性を鍛えることが重要であると説いています。

 

とはいえ、論理・ロジックや分析が不要というわけではなく、当然必要である前提とした上で、サイエンスとアートのバランスを取ることが大切と説いています。

 

個人的に興味深かった点を3つシェアしたいと思います。

1)私のようなエリートではない人にも気づきが多く参考になる

本書で前提としているエリートは、主にグローバル企業のマネジメント層や外資系コンサルで働く人達です。「俺、エリートではないし関係ないしな。でも何か参考になることがあるはずだ」という意識で読んでいきました。

 

興味深いのは「第5章 受験エリートと美意識」で、美意識を持っていない個人、企業が問題を起こしている事例や背景についての説明は説得力がありました。

ナチス・ドイツの裁判、ユダヤ人虐殺を主導したとされていたアイヒマンを事例にしています。アイヒマンは「自分は命令に従っただけだ」と主張していることに対して、つまり、

 

「悪とはシステムを無批判に受け入れること」

 

だとしています。そうした悪に手を染めないためには、

 

「システムを相対化」

 

することが必要で、そのためには自分なりの美意識を持ち、その美意識に照らして、システムを批判的に見ることでしか、悪から遠ざかるすべはないとときます。

 

2)脳科学の観点からも考察があり、客観性がある

意思決定における感情の重要性を説明したソマティック・マーカー仮説という学説が紹介されています。

何かと言うと、

 

「意思決定はなるべく感情を排して理性的に行うべきだ」という常識は誤りであり、

「意思決定においてむしろ感情は積極的に取り入れられるべきだ」という理論です。

 

現時点では反論もあり、まだ仮説の域をでないそうですが、どちらかというと私は論理よりも「想い」で動くタイプなので、共感を受けました。

 

 この「感情」を上手く扱うために、セルフアウェアネス(自己認識)が大切で、セルフアウェアネスを高めるために、瞑想を中心としたマインドフルネスの取り組みが世界中で進んでいることが紹介されています。

 

ある研究によると、瞑想によってこめかみの内側の島皮質という部分と、前頭前野、つまりひたいの出っ張ったところの皮質の厚みが増すことが判明しているそうです。島皮質はセルフアウェアネスの向上にとって重要な部位、そして前頭前野は「美を感じる役割」を担っている可能性が近年の脳研究で判明しているようです。

 

私は毎朝瞑想を行っていますが、心だけではなく、瞑想によって物理的な体の物質が変化するということに驚きました。

 

3)アート(絵画、文学、詩など)に対する見方が変わった

本書を読むまでは、アート=個人の趣味という見方を持っていました。

しかし、絵画を見たり、文学や詩を読むこと、つまりアートを通して観察眼を養うことができる。つまり絵画で表現されている世界観や描写には正解がない。感じ方はそれぞれの感性や価値観によって異なる。

この点、誰が説いても同じ正解が導かれるはずのサイエンスと対する概念です。

 

その一方で、ノーベル賞受賞者は、一般人と比べて2.8倍も芸術的趣味を持っている確率が高かったことがある研究で報告されています。つまり、アートとサイエンスというのは、一般に考えるほど対象的な営みではなく、両者は相互に影響を与えあい、高い水準の知的活動を可能にしているかもしれないと説いています。

 

ちなみに本書の構成で特徴的なのは、

 

「忙しい読者のために」

 

といって前書き8ページを使って本書のサマリーを記載しています。

 

ここだけを読むだけでも十分に価値があると思います。

サマリーを意識しながら本編を読むとさらに理解が深まります。

 

次の週末は、家族で美術館へ行きたいと思います。

 

この記事を読んでくれた方に、少しでもお役に立てれば嬉しく思います。

 

www.tobikan.jp